はじめに
数多くの商品やサービスから1つを選んでもらうためには、消費者が自然に買いたくなるような状態を作ることが重要です。
また、消費者に心地よく認識してもらうためには、ある程度のまとまりや関連性をもたせる必要があります。
バランスが取れていない状態で商品やサービスを消費者に見せると、個々の良さを理解できません。
自然に認識を可能にする方法としてあげられるのが「ゲシュタルト効果」の利用です。
今回はゲシュタルト効果とはなんなのか、マーケティングへの活かし方について紹介します。
ゲシュタルト効果って何?
ゲシュタルトとはドイツ語で「形態」という意味で、人間が認識する全体性のある構造のことを指します。
「ゲシュタルトの法則」というのは、人間が近いものや似ているものをグループ化したり、そのなかから閉じた図形を見つけたりする傾向があるという法則です。
これは人間が生まれながらに、無意識にもっている感覚であり、ゲシュタルトの法則に基づいたデザインにすることで、高いマーケティング効果を得られるでしょう。
ゲシュタルトの法則に基づいてデザインするためは、大きく分けて3つのルールを守らなければなりません。
1つ目は同じ意味や役割のある要素をまとめることです。
全体がぼやけていても塊をグループ化できます。
2つ目は、関連性のない要素につながりをもたせないことです。
無意識に生まれるつながりを予測すれば、混乱のないデザインにできます。
3つ目は余白を利用することです。
意図した部分に注目させられます。
この方法を取ることで、より多くの人から好まれるデザイン性になります。
これが「ゲシュタルト効果」です。
ゲシュタルトの7つの法則
私達人間は個々の細かいパーツを見る前に全体を見ます。
マーケティングにおいて高い効果を期待できるゲシュタルトの法則ですが、その前に重要なのは着眼点です。
ゲシュタルトの法則には着眼点の異なる、基本の7法則があります。
基本となる法則は以下の通りです。
・混同の法則
・連続の法則
・併合の法則
・共通運命の法則
・面積の法則
・対称の法則
十分なゲシュタルト効果を得るために、デザインの際は根幹となる7つの法則を正しく理解してください。
近接の法則
「近接の法則」とは、物理的に距離が近いものを仲間、同じグループとして考える法則です。
それぞれの要素の数は関係ありません。
たとえば同じサイズの図形が、近い場所に10個・20個・30個ずつ固まって並んでいる場合、図形のグループは3つと認識する人が大多数です。
しかし、図形同士が近過ぎると、グループ分けされているように見えないことがあります。
アイコンとテキストを分けて並べる場合は、グループごとに余白を取って、特に意味や内容が同じものを近づけて配置してください。
類同の法則
「類同の法則」とは、色・形・サイズ・向きが同じものを同じグループとして認識する法則です。
「近接の法則」と同じように、要素の数は関係ありません。
たとえば、赤字は同じく赤字のテキストを、丸いアイコンは同じく丸いアイコンを仲間であると認識します。
同じサイズの図形が並べられていても、色や形が違うとグループに属さないものと認識されてしまうでしょう。
「類同の法則」は要素同士が離れていても有効です。
似ている要素から関連性を見出して、グループ化できます。
連続の法則
「連続の法則」とは、図形同士がつながることで、別の形になったり認識のされ方が変わったりする法則です。
特に、線の図形などは配置によってまったく別のものとして認識されやすいです。
たとえば、同じ長さや細さの線を2本交差させた場合、アルファベットの「X」に見えてしまうことがあります。
このような場合は、2本の線を異なる色にすることで、しっかりと線が交差しているように見えるでしょう。
また、余白を作らずに同じ色の図形を連続させると、1つの図形として認識されやすいので注意してください。
閉合の法則
「閉合の法則」とは、閉じた形をしているものに挟まれたものが、同じグループであると認識されやすいという法則です。
閉じた形には「」や()が該当します。
」や】などの単体では機能せず、閉じた図形かつ、同じ色や細さをした2つがセットになることで効果を発揮します。
2つセットであるだけでなく、図形の向きも重要でしょう。
たとえば、同じ種類であっても』と『では、グループとして認識されることはありません。
これを応用して、水平スクロールデザインなどが作られています。
共通運命の法則
「共同運命の法則」とは、複数の要素が同じ向きに動いたり、同じ周期で点滅したりするものを同じグループとして認識する法則です。
良く見る光景としては、鳥の群れです。
同じ方向に飛んでいく鳥の群れはグループの一種です。
同じ色や形をした複数の図形のなかでも、同じ動きをするものを特に近しい存在であると認識します。
たとえば、同じ色や形をした車が連なっていても、2つの車線でそれぞれ真逆の方向に進んでいれば、同じ方向に進んでいる車を1つのグループとして認識するでしょう。
面積の法則
「面積の法則」とは、2つの図形が重なっている場合に、図形の直径が同じであっても小さい面積ものが手前に見える法則です。
たとえば、直径5cmの丸が一辺の長さ5cmの正方形と重なっていた場合、丸のほうが手前にあるように見えます。
また、大きい面積の図形の上に小さい図形を置くことで、浮き出ているように見せることもできます。
この手法はタイトルのロゴなどに使用されることが多く、平面のデザインを立体的に見せることができるので、3次元に近いデザインとなりやすいでしょう。
対称の法則
「対称の法則」とは、左右対称な図形が認識されやすいという法則です。
対称の法則が働いているものとして、良く例にあげられるのは「ルビンの壺」です。
絵の中央に壺が置いてあり、その壺は左右対称の形で、背景の部分が認識しやすくなっています。
背景部分は人の横顔に見えるのが普通です。
もし、見えづらい方は中央に線を入れてみてください。
左右を比較しやすくなるでしょう。
左右対称はシンメトリーともいい、デザインに活用されることも多いです。
シンメトリーで有名なのが、対比が強調されるスプリットスクリーンです。
どうマーケティングに活かせるの?
「ゲシュタルト効果」がマーケティングに活きることは冒頭で説明しました。
それでは、具体的にどのように活かせるのでしょうか。
いくつかの具体例を紹介します。
1つ目は近接の法則です。
イベントの案内チラシを作成する際に、イベント名・日時・連絡先などを等間隔で並べるよりも、同じ要素のものを近づけてください。
多くの要素があっても見やすくなります。
2つ目は類同の法則です。
雑誌の記事を作成する際に、大見出しは赤、中見出しは青など色を同じにしましょう。
読者が欲しい情報を見つけやすくなるのです。
UIはそのサイトの価値を左右する
UI(ユーザーインターフェース)とはユーザーとサービスとの接点を意味しています。
サイトにおいては、ユーザーが画面上で操作を行って情報を受け取ります。
その役割を担っているのがUIです。
インターネットサービスが増加している現代では、サイトごとに差別化を図らなければ、良いものでも埋もれてしまいます。
ユーザーが直接接するUIは、サイトの価値を左右する重要な存在です。
数あるサービスのなかからユーザーに選んでもらうためには、使いやすいUIにする必要があります。
特にアイコンやテキストのデザインは、UIの質に影響するため、ユーザー目線で考えなければなりません。
その際に使用するのが「ゲシュタルトの法則」です。
ユーザーが違和感なく自然にとらえられる状態を作ることで、結果としてユーザーに選んでもらえるUIとなるでしょう。
まとめ
今回は「ゲシュタルト効果」とは何なのか、マーケティングへの活かし方について紹介しました。
「ゲシュタルトの法則」には、根幹となる7つの法則があり、それぞれ着眼点が異なります。
それらをマーケティングに活かすことで、消費者が自然に選びやすい状態を作り出し、そのなかで自身のニーズに合ったものを見つけてもらうという道筋ができます。
この道筋ができることこそ「ゲシュタルト効果」であり、高いマーケティング力を得られるデザインを作りたい場合に欠かせない重要な効果といえるでしょう。