はじめに
課題を解決したいときや新規事業のために計画を立てるときなど、自社に関する状況を的確に把握し、それを自分の考えとして理論的にまとめ、他人に説明しなければならない場面は多くあります。
しかし自社に関する状況を的確に把握すること、自分の考えを理論的にまとめること、さらにそれを他人にもわかりやすい形にすることは、いずれの段階でもテクニックが必要です。
このテクニックをゼロから身につけることは難しいですが、誰にでも使いやすい形態へまとめたものがあります。
それが、この記事で解説する「フレームワーク」です。
フレームワークとは
フレームワークとはビジネスにおいて、課題解決や戦略立案に活用できる枠組みや考え方のことです。
「どうしたら集客できるのか」「売り上げを伸ばすにはどうしたらいいのか」といった漠然とした課題を解決しようとしたとき、何から考えれば良いのか即答できる人は少ないと思います。
そういった場合にフレームワークを用いて考えることで、考えるべきポイントや思考の流れがパターン化され、誰でも効率的な思考に役立てられるのです。
つまりフレームワークとは、課題の解決策や戦略そのものではなく、解決策や戦略へと続く道を作るための設計図のようなものだといえます。
このフレームワークを目的によって使い分け、自分達のビジネスに当てはめて考えることで、論理的に解決策や戦略に至ることができます。
よく使われるフレームワーク
フレームワークにはたくさんの種類があります。
それぞれに長所と短所があり、何を目的としているのかによってどのフレームワークを用いるべきか変わります。
そのため、目的に合わせて適切なフレームワークを選ぶことが大切です。
ここでは、よく使われるフレームワークを10種類紹介します。
目的に適ったフレームワークを用いれば、仕事の効率が大幅にアップします。
まずはどんな種類があるかを知り、適切な選択をできるようにしましょう。
ロジックツリー
ロジックツリーとは、課題を要素ごとに分解して広げ、最適な解決策を見つけ出すフレームワークです。
課題を要素ごとに分解する過程から、大きな木が枝分かれして小さな葉がたくさんついている様子をイメージして名付けられました。
ロジックツリーを利用すると課題の全体像をつかみやすくなるため、本質的な問題がどこにあるのか、それを改善するためにはどうすれば良いのかが可視化されます。
課題を分解する際には、「HOW(どうやって)」「WHY(どうして)」を繰り返します。
もとの課題からいくつかの要素に分解し、その要素一つひとつをさらに細かな要素に分解する、という繰り返しによって、解決策を見つけ出すのです。
たとえば「利益が少ない」という課題を分解する場合、「売り上げが少ない」「支出が多い」という原因(WHY)が考えられます。
「売り上げが少ない」という要素には、「リピート率が少ない」「新規顧客が足りない」という原因が考えられるでしょう。
この繰り返しによって本質的な問題や解決策を見つけ出すのがロジックツリーです。
SWOT分析
SWOT(スウォット)分析とは、経営戦略や計画の現状分析を行う際によく使われるフレームワークです。
自社の現状を内部環境と外部環境に分け、さらにそれぞれをプラス面とマイナス面に分けて分析します。
SWOTとは、内部環境のプラス面であるStrength(自社の強み)、内部環境のマイナス面であるWeakness(自社の弱み)、外部環境のプラス面であるOpportunity(機会、チャンスとなる外部要因)、外部環境のマイナス面であるThreat(脅威)の頭文字をとったものです。
自社の現状を各項目に分類することで、客観的に把握できます。
もちろん、ただ各項目に当てはまる要素を並べるだけで終わっては意味がありません。
StrengthとOpportunityとを組み合わせて新たなビジネスチャンスを見出す、WeaknessとThreatを組み合わせて想定しうる危機を洗い出すなど、SWOT分析によって得られた情報を今後の戦略立案にも活かすことが重要です。
STP分析
STP分析は、新たにビジネスを展開する際のマーケティングによく使われるフレームワークです。
STPとは、Segmentation(市場細分化)、Targeting(市場の決定)、Positioning(自社の立ち位置)の頭文字をとったものです。
Segmentationで市場の全体像を把握し、Targetingでその中からねらうべき市場を決定し、Positioningで競合他社との位置関係を決定します。
特にTargetingやPositioningについては、自社ではなく、顧客の目線で分析する必要があります。
新たにビジネスを展開するにあたり、自社そのものや自社の製品・サービスなどの立ち位置を客観的に明確にすることによって、その後どのような戦略をとるべきかを決める根拠とするのです。
バリューチェーン
バリューチェーンとは、企業のさまざまな活動が最終的な付加価値にどのように貢献しているのか、その量的・質的な関係を示すためのフレームワークです。
企業の活動には、原材料の調達、生産、物流、販売、販売後のサービスなど、さまざまな工程があります。
その工程のうち付加価値(自社の製品やサービス)の競争優位性を増すことに貢献している工程はどこか、または競争優位性を減じている、非効率な工程はどこかを明確にするのがこのフレームワークです。
これによって自社の強みとなっている工程がわかれば、その部分をセールスポイントとしてアピールできます。
また自社の弱みとなっている工程がわかれば、その部分を強化する、または外部委託して効率化をはかるなど、対策ができます。
MECE
MECEとは「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の略で、漏れや重複なく物事を考えるためのフレームワークです。
なんらかの課題を考えるときに、漏れや重複がある場合、正確な分析はできません。
漏れや重複なく物事を把握し、正確な分析をするための下地を作ることがMECEの役割であるといえます。
MECEは大きく分けて、トップダウンアプローチとボトムアップアプローチという2つの手法があります。
トップダウンアプローチは、全体を見て分類枠を先に決定し、そこに要素を当てはめていく手法です。
分類の仕方がはっきりしている場合や、全体像を把握している場合などに効果的といえます。
ボトムアップアプローチとは、思い浮かぶ要素をすべて洗い出し、それを分類して全体を形作る手法です。
どのように分類すれば良いかわからない、全体像がはっきりしないケースなどに効果的です。
いずれにしても、MECEだけではただ物事を分類しただけに過ぎず、MECEによって得た結果をどう利用するかが重要になります。
4P分析
4P分析は、マーケティングの施策立案によく使われるフレームワークです。
4Pとは、Product(商品)、Price(価格)、Promotion(販促)、Place(流通)の頭文字をとったものです。
Productはどのような製品・サービスを提供するのか、Priceはその製品・サービスをいくらで提供するのか、Promotionはその製品・サービスの販促をどうするのか、Placeはその製品・サービスをどのように提供するのかを表しています。
この4項目に分けて分析することで、自社の強み、弱みがどこにあるのかを明確にできるのです。
たとえば、高品質(Product)で高価格(Price)の製品を製造しているものの、広告(Promotion)を打たず、販路(Place)が狭い、という場合、ProductとPriceは強み、PromotionとPlaceは弱み、ということになります。
こうした分析結果を、どのようなマーケティングを行うか施策立案するために利用するのです。
ピラミッドストラクチャー
ピラミッドストラクチャーは、自分が伝えたい主張や結論に説得力をもたせる根拠について探るため、用いられるフレームワークです。
ある主張を頂点として、その根拠を細分化してピラミッド状に図式化するため、こう呼ばれます。
ある主張が正しいことを証明しようとするとき、その裏づけとなる根拠が複数必要になります。
さらにその根拠の裏づけとなる根拠を、というように積み上げていくことで、ピラミッド状になるわけです。
これを利用することで、企画書や報告書に説得力が増し、自分の主張や結論が相手に伝わりやすくなります。
またこの考え方を身につけることで、結論は何か・その根拠は何かという、物事の本質にだけ注目できるようになり、あらゆる場面で業務をスピードアップできるというメリットもあります。
SMARTの法則
SMARTの法則とは、達成可能な目標を立てるために使われるフレームワークです。
SMARTとは、Specific(具体性)、Measurable(計量性)、Achievable(達成可能性)、Realistic(関連性)、Time-related(期限)の頭文字をとったものです。
Specific、つまり具体的な目標を立てることで、その目標を達成するための行動も具体化することができます。
Measurable、つまり計測できる・数字で表せる目標でなければ、そもそも目標が達成できたのかできなかったのかの評価すらできないのです。
Achievable、つまり達成できる目標であること、というのは意外に思われる人もいるかもしれません。
なぜなら最初から達成不可能であることが明らかな目標では、社員のモチベーションは上がりません。
Realistic(あるいはRelevant)、つまり目標を達成した先には何があるのか・なんのために目標を達成するのかを明確にすることで、社員のモチベーションを向上させられます。
Time-related、つまり目標の期限を区切ることで、社員は集中して業務に取り組めますし、企業全体の事業計画を立てることもできます。
これらの条件が満たされている目標を掲げることで、社員のモチベーションとパフォーマンスが向上し、結果的に企業としての目標を達成できるのです。
5フォース分析
5フォース分析とは自社と競合企業だけではなく、業界全体の動向を分析するときに使うフレームワークです。
業界内の競合企業、顧客、供給業者、新規参入業者、代替品の5つを自社の脅威(フォース)として分析します。
いずれも自社をとりまく外部からの脅威であり、収益に直結する要素です。
5フォース分析によって収益性をはかる際には、「競争が激しければ収益性は落ち、競争が限定的なら収益性は上がる」という理論が前提にあります。
5つの脅威のうち、収益性を上げるのはどの要素で、下げるのはどの要素であるのかを分析することによって、「自社製品で収益性が見込めるのか」「どこをどうすれば十分な収益性を確保できるか」という結論を見出せるのです。
このため、新規参入や新製品開発、新ブランドの立ち上げ時などに、収益性を検証するのに役立ちます。
PDCA
PDCAはPlan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字をとったものです。
このサイクルを順番に回し繰り返すことで、現状を改善したいときに用いられます。
Planでは、目標・目的を設定し、実行計画を立案します。
Doでは、計画を実行に移すのです。
Checkでは、実行した内容の検証を行います。
Actionでは、検証結果を受け、今後どのような対策や改善を行っていくべきかを検討します。
ここで特に重要なのはCheckとActionの過程です。
実行した内容の検証が不適切であれば、それを受けて立案する対策も当然不適切になってしまいますし、きちんと対策や改善を行わなければ、現状の改善はあり得ません。
PDCAは企業や部署全体から個人に至るまで、幅広く現状改善に利用できます。
まとめ
フレームワークとは何か、そしてよく使われるフレームワークの概要について解説しました。
自分の目的に適ったフレームワークを用いれば仕事の効率が大幅にアップします。
まずは適切なフレームワークを選べるようになりましょう。
また、フレームワークの理論的な考え方を身につけられれば、とっさの場面でも自分の考えを理論的にまとめたり、他人に伝わりやすくしたりできます。
ぜひフレームワークを使いこなして、ビジネスに役立ててください。