はじめに
KPIとは「Key Performance Indicator」の頭文字を取った略語で、日本語に訳すと「重要業績評価指標」のことを指します。
つまりKPIとは、目標を達成するうえで、その達成度合いを計測・監視するための指標のことです。
少し難しそうな印象を受けるワードですが、たとえば、SNSにおけるKPIは「再生回数」や「いいね」の数などが当てはまります。
再生回数やいいね、保存数などというKPIが達成できれば、それが自ずと売上高といった利益に作用してくるのです。
ここでは、企業におけるSNS活用とKPIについて解説をしていきます。
KPI設定の大切さ
SNSを運用するにあたってまず必要になってくるのが目的です。
しかし、KGI(Key Goal Indicator)と言われる「重要目標達成指標」を設定しないことには、それを達成するためのKPIの設定ができません。
KPIを過程とするならば、KGIはその過程を経た先にあるゴールを指します。
ここでいくつかKGIの例を挙げてみます。
新たにブランドを立ち上げる場合は「ブランドの認知度を上げること」などが想定されます。
既存のブランドが新商品を打ち出す場合は「商品の売上高」などがKGIになり得るでしょう。
既存のブランドがさらに認知を獲得する場合は「ブランド好感度の向上」などがKGIになります。
ポイントとして、目標であるKGIも必ず数値で設定することが今後KPIを設定するうえでも重要になってきます。
大切なのはKGIによってKPIの設定も必ず変化することです。
KPIの設定方法
前述の通りKPI(過程)はKGI(ゴール)によって変化します。
まずは、KGIをしっかりとした数値でわかるように定めましょう。
たとえば、既存ブランドの認知度向上を目指して、KGIを「20代の売上○%→○%」と定めたとします。
その次に設定するのが、KPIの指標です。
また、注意したいのはマーケティングターゲットに合わせて、用いるSNSの媒体をきちんと見極めることです。
若年層がターゲットであるのに、わざわざ若年層のユーザーが少ないSNSを土俵に選ぶことは非常に効率が悪いと言えます。
さらに、そのSNSの中にはさまざまな指標があります。
その中でどの項目をKPIとするかもマーケティングにより異なってくるため見極めが必要です。
競合相手を研究する
初めてSNS運用をする場合、SNSにはそれぞれ指標が多く存在しているだけでなく、それぞれが目的に合わせて特色を持っているので、基準がない中でいきなりKPIを設定することは困難です。
そんな場合で有効なのが競合相手の研究です。
競合相手を何社かピックアップし、それぞれがどんな媒体でどの指標でどのくらいの数値をあげているかリサーチすることで、ある種の基準を設定できます。
具体的にはそれらの数値の平均値、もしくは中央値を業界の基準として算出すると、自社のKGIに合わせたKPIが定めやすくなります。
各SNSのKPI指標
ここで、日本で一定数のユーザーを獲得している各SNSにおけるKPIの指標をまとめました。
SNS運用の目的はターゲットによって大きく変わってきます。
アクティブユーザー数やユーザーの年齢層は、媒体を選ぶうえで特に重要なセクションを担っているので、しっかり確認しておきましょう。
Twitterの国内アクティブユーザー数はおよそ4,500万人です。
幅広い年齢層に支持されていますが、メインユーザーは20代で、ユーザーの平均年齢は30代半ばです。
指標になる項目として、「フォロワー数(アカウントの成長を検証するうえでの重要な数値)」、「いいね数(ユーザーが投稿に関して興味関心があるか測る数値)」、「リツイート数(ユーザーが投稿に関して、拡散した・同意しているなど確度の高いユーザー数を図る数値)」の3つが代表として挙げられます。
また、「エンゲージメント率(リツイート・いいね・リンククリック・フォロー・リプライなどの数をインプレッション数で割った数値)」「オーディエンスデータ(ユーザーの投稿内容や興味関心から分析したデータ=ターゲティングがうまくいっているかの指標となる)」などにより、分析した詳しい数値を拾うこともできます。
Instagramは写真・動画などのメディア投稿をメインに行えるSNSで、国内のアクティブユーザー数はおよそ3,300万人です。
ユーザーの半数を10・20代が占めており、投稿にハッシュタグを付けることで同じ話題を共有するユーザー同士での拡散・流入が盛んに行われているのもこのSNSの特徴として挙げられます。
また、ユーザーのうち9割が企業アカウントをフォローしているという統計もあるのです。
指標となる項目として、「動画コンテンツの再生数(コンテンツが見られたかどうか測る数値)」「いいね・コメント数(コンテンツに対してより高い興味関心を持ったユーザーを測る数値)」「URLのタップ数(誘導したいリンクなどに実際にどのくらい飛んだか測る数値)」などが挙げられます。
Facebookの国内アクティブユーザー数はおよそ2,600万人です。
実名性が高いためリアルでのつながりやBtoBにおいて重宝される傾向にあります。
登録者は30~40代が最も多く、逆に10代の利用者は極めて低いのも特徴です。
指標となる項目として「いいね数(アカウントの成長を測る重要な数値)」「シェア数(投稿をシェアした数で投稿内容に同意している興味関心が高いことを測る数値)」「リーチ数(Facebookの投稿を閲覧したユーザー数)」「各投稿のエンゲージメント率(リーチ数に対していいね・コメント・シェア・投稿のクリックを行った人の割合を示す数値)」「いいねをしているユーザーの属性(ターゲティングが適切に行えているかを測る指標)」が挙げられます。
ただ、リーチ数に関しては、いいねが多くてもリーチが少ないと投稿内容の見直しを検討する必要があるかもしれません。
YouTube
YouTubeはGoogleが運営する動画プラットフォームです。
年代性別問わず幅広い人が利用しており、国内アクティブユーザーは6,500万人以上いると言われています。
利用している人口が多い分、更新頻度が低いチャンネルや同じようなプロモーションの動画を投稿しているチャンネルは埋もれてしまう場合もあるのです。
指標となる項目としては、「チャンネル登録者数(チャンネルをフォローしているユーザー数で情報をキャッチしたいと思っている感度の高いユーザー数、注目数、認知度が測れる指標)」「視聴回数(動画が再生された回数で投稿した内容に興味関心を持った人の数値を測れる指標)」「視聴者維持率(動画再生中にその動画がどのくらい見続けられたかわかる数値で、スキップされている場合や動画を離脱するタイミングが早い場合は内容を見直す指標)」「高評価数(ユーザーが投稿に対して高く評価しているという数値で、投稿に対してポジティブな反応が得られているかどうかが測れる数値)」などが挙げられます。
Tik tok
投稿できるコンテンツは短い動画メディアに留まるものの、10代の利用率が50%に届く水準であることからZ世代をターゲットにしやすいSNSだと言えます。
国内アクティブユーザー数は950万人で、その半数以上を10・20代が占めるのが特徴です。
逆に40代以上の利用率は10%を割っており、幅広い世代に向けて情報を発信することには不向きな媒体です。
指標となる項目としては、「動画の再生数(コンテンツが見られたかどうか測る数値)」「いいね、コメント数(コンテンツに対してより高い興味関心を持ったユーザーを測る数値)」「URLのタップ数(誘導したいリンクなどに実際にどのくらい飛んだか測る数値)」が挙げられます。
投稿にあたっても短時間でキャッチーな動画が作れるのも特徴です。
KPIを設定するメリット
いろいろと前準備が必要になるので、敬遠されてしまいがちなKPIですが、設定することでビジネスにおいて大きな効果を発揮します。
ここでは、その手間をかけてまで絶対に設定するべきKPIのメリットを2点解説していきます。
目標達成までの重要点が数字として明らかになる
KPIを設定する最大のメリットは、目標の「見える化」と「可視化」です。
KGIに向かって進むべき道筋を明確にするだけでなく、途中の小目標としてピンを立てられるので、従業員は進捗状況を常に数字で追えるという効果だけでなく、目標達成に向かってやるべきことがはっきりするので、業務の効率化が期待できるだけでなく、モチベーションの向上にもつながります。
また、途中で状況が変わったとしても小目標をツリー状にいくつか設定しておくことにより、状況の変化に柔軟に対応することが可能になります。
さらに、KPIを設定する際は、あくまで現実的な数値を設定することが重要です。
あまりにも高い目標は従業員のモチベーション低下を招くおそれがあります。
PDCAが回しやすくなる
プロジェクト管理において、「PCDA」(計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Act))を繰り返すことで、最終的な目的であるKGIが達成に近づくのです。
KPIを設定しておくことで、KGIに対する進捗具合の管理が容易に行えることが期待できます。
すなわち、KPIの達成具合に関してPCDAを繰り返すことができるのです。
KPIを見直し続けることで、KGIの達成率を上げることにつながり、プロジェクトの成功確率を底上げすることが望めます。
また、仮にKGIの達成が叶わなかった場合でも、KPIの途中進捗を確認することで「何が問題だったか」を具体的に数値で後追いすることが容易になり、次のプロジェクトに最大限活かすことができます。
具体的な運用効果を確認する
KPIの進捗は各SNSから確認することができます。
たとえば、Twitterではアナリティクス、Instagramではインサイトといった、各SNSのユーザー専用ページから常に確認できる仕様になっているので、こまめに確認するよう心がけましょう。
この作業をルーティーン化することで、前述したPDCAもより効率的なものになります。
また、SNSは頻繁にアップデートが行われているツールです。
それに伴ってユーザーの使い方も日々変化しているので、気づいた時には的はずれな運用になっている、なんてケースも考えられます。
そのため、場合によってはKPIだけでなくKGIから見直しが必要になる場合ももちろん想定されます。
運用方法の見直しに関しては軽いフットワークで取り組めるよう体制を整えておきましょう。
まとめ
SNS運用は周りがやっているからといって、ただやみくもに始めただけでは、ただ時間とコストがかかってしまいます。
自社の現状に合わせたKGI・KPIをしっかりと設定し、それらに合わせた媒体選び、情報の発信の工夫などを行うことで、SNSは単なる情報発信ツールではなくビジネスに貢献・直結する有意義なツールになります。
もちろん、効果測定も定期的に行い、より有効的に運用できるよう日々試行錯誤に務めることが、上手にSNS運用をビジネスに活用するカギになります。