はじめに
最近、LTVという言葉を耳にすることが多いかと思います。
LTVについて周りに尋ねようと思ってもなかなか聞きにくい、もしくは周りに詳しい人がいなくてお悩みの方もいるかもしれません。
ここでは、LTVとは何か、なぜ重要なのかを説明していきます。
LTVをきちんと理解して、あなたのビジネスに活かしてみましょう。
LTVとは?
LTVとは、Life Time Value(ライフタイムバリュー)の略称です。
日本語に訳すると、顧客生涯価値となります。
顧客が企業との関係を持ち続ける期間において、企業が顧客から獲得できる収益の総額を指します。
具体的には、ある顧客が企業と取引をする期間中に、その顧客が企業から購入する商品やサービスの金額、再購入の確率、紹介による新規顧客獲得の期待値などを考慮して、顧客ごとに計算されます。
LTVは、企業が顧客獲得にどれだけのコストをかけることができるか、あるいは顧客の満足度を向上させるための改善策を実施するかの指標として使用されます。
また、LTVが高い顧客を特定し、彼らに対するマーケティング戦略を強化することで、企業の利益向上につなげられます。
LTVの計算方法
LTVの式は次の通りです。
LTV = (顧客の平均年間収益) × (顧客の平均購買期間)
この式で、顧客の平均年間収益は以下の式で計算されます。
顧客の平均年間収益 = (1年間あたりの平均購入金額) × (平均注文回数)
また、顧客の平均購買期間は以下の式で計算されます。
顧客の平均購買期間 = 1 / (顧客の離脱率)
離脱率は、ある期間内に企業を離れた顧客の割合です。
たとえば、1年間に企業を離れた顧客の割合が10%の場合、離脱率は0.1となります。
以上の式を用いて、企業は顧客ごとにLTVを算出できます。
LTVが注目されている理由
LTVが注目されている理由は、既存顧客の維持と新規顧客獲得の両方に活かせるからです。
マーケティングでは「1:5の法則」と「5:25の法則」という2つの通説があります。
「1:5の法則」とは、新規顧客に販売する方が既存顧客に販売するコストの5倍かかるという法則です。
「5:25の法則」は、顧客離れを5%改善すれば、利益率が最低でも25%改善されるという法則です。
この2つの通例はどちらも、新規開拓より既存顧客を維持した方が、効率的に利益を伸ばせることを示しています。
しかし、LTVは既存顧客のみを重要視するのではなく、新規開拓にも活かせる指標となっているのです。
LTVが高い新規客により積極的にアプローチすることで、購買意欲の高い新規客を確保し、企業の収益向上につなげることができます。
LTVが高い顧客を獲得し、長期的な関係を築くことで、企業のブランドイメージを高め、競合他社との差別化も可能です。
以上のように、LTVは企業にとって非常に重要な指標であり、企業の長期的な成長戦略に大きく寄与することが期待されています。
LTVを向上するメリットとは?
ここまで、LTVについて説明してきました。
LTVの概要や計算方法、重要性についてはわかりましたが、LTVを向上するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、LTV向上のメリットについて、2点紹介していきます。
安定した収益
一人の顧客に長く利用していただくことや、ロイヤリティの高い顧客になっていただくことは、売上のキープや向上につながります。
これからの日本では人口減少が加速するため、さまざまな層の顧客に対してむやみやたらにリーチすることは、コストパフォーマンスが悪いです。
また、先ほど説明したとおり、マーケティングの世界では「1:5の法則」というものがあります。。
LTVが高い、つまりは顧客の平均購買期間が長く、購買頻度が多いことは、少ないコストで収益を生み出せる状態であるとわかります。
そのため、既存顧客に継続的に利用してもらうことや、リピーターになってもらうことで、安定した収益を生み出せるのです。
新規開拓
先ほどの項目で、新規開拓はコストがかかると説明しました。
しかし、LTVを向上させることで、新規開拓も実現できる可能性があるのです。
既存顧客の満足度が向上(LTVが向上)することで、その顧客が口コミや紹介でサービス・商品を広めてくれます。
その口コミや紹介を受けて、新規顧客が現れるというような流れです。
このような新規開拓手法ですと、既存顧客の口コミがメインですので、コストがかかりません。
また、口コミや紹介により興味を持った新規顧客は、既存顧客と同じような価値観を持っているでしょう。
そのため、既存顧客のような長期間・複数回利用してくれる優良顧客になり得ると考えられます。
そして、その新規顧客に対しても、従来通りのLTV向上策を講じれば、継続的な顧客となってくれる可能性が高くなります。
LTV向上する上で注目すべきポイント
LTVを向上することで得られるメリットについて、理解できたかと思います。
では、LTVを向上するうえで、注目すべきポイントはどこでしょうか。
ポイントを2つに絞ってご紹介します。
このポイントを意識して、LTVをビジネスに取り入れてみましょう。
購入単価を向上させる
LTVにはいくつかの計算方法がありますが、平均購買単価や年間購入額といった購入単価は、どの式にも登場します。
そのため、この購入単価が上昇すると、LTV向上につながります。
購入単価を向上させる方法は、モノであればまとめ売りやセット売りを行うことです。
サービスであれば、月契約よりも年契約をすることなどが考えられます。
この手法は、顧客としては得すると感じやすいため有効でしょう。
また、従来の商品よりもグレードの高い商品を販売することも、購入単価向上の手法です。
ただ、商品やサービスによっては、まとめ売りや長期契約が難しいもの、新たにグレードアップ版を提供することが難しいものもあります。
その際には、従来のものを単純に値上げすることが方法として挙げられます。
解約率を下げる
解約率とは、本ページの「LTVの計算方法」の項目で登場した離脱率と同義です。
LTVにはいくつかの計算方法がありますが、購入単価と同じように、継続購買期間はどの式にも登場します。
途中で解約されることなく、より長い期間顧客になってもらうことは、LTVを向上させるために必要不可欠な要素です。
アンケートを通して不満を探る、トラッキングするなどして、相手の興味や行動特性に合わせた魅力的な商品・サービスを提供し続けることが求められます。
しかし、現状の商品やサービス自体に魅力がない場合もあります。
その際には、アンケートの結果などから得た顧客の声をもとに、新たな商品やプランを作ることも必要になります。
顧客から、長期間・複数回利用したいと思ってもらえるような価値を提供することが重要です。
LTV向上の施策
LTVが向上することで、多くのメリットがあることがわかりました。
では、LTVを向上させるには、どのような取り組みを行うと良いのでしょうか。
次からは、LTV向上の施策について4点紹介しますので、具体的な例を踏まえて見ていきましょう。
アップセル・クロスセルをする
アップセルとは、顧客により上位(高価格)のサービス・商品に移行してもらうことです。
クロスセルとは、自社の商品やサービスを利用してもらっている顧客に、追加で他の商品やサービスも購入してもらうことです。
クロスセルの例としては、セット販売などが挙げられます。
また、アップセル・クロスセルのメリットとしては、顧客単価上昇や営業効率アップが考えられます。
しかし、サービスのグレードアップやセット販売・追加注文を促すことは、現状に満足している顧客からは煙たがられる可能性もあります。
そのため、顧客離れにつながるような過度なプロモーションを避けつつ、取り組まなければなりません。
アップセルやクロスセルを行うことで、自社の販売を向上させることにつながります。
商品単価を上げる
アップセル・クロスセルも、顧客一人あたりの購入単価を上げることを意味します。
しかし、ここでは、既存のサービスや商品を値上げすることを指します。
つまり、アップセルのような値段が上がるから品質も上がる「グレードアップ」とは異なるのです。
単純な値上げには大きなリスクも伴うため、慎重に行わなければなりません。
顧客が納得する形での値上げであれば、単純に売上が増加するため、良い施策となります。
しかし、全員が納得する形での値上げは難しいです。
値段が上がることで、他の商品やサービスに移行する顧客も多少は出てくるでしょう。
値上げ分によって得られる利益以上に、損失が増える可能性もあります。
そのため、値上げを行うことが妥当かどうか、よく判断して行う必要があります。
サービス利用から解約までのフロー分析
購入から解約までの一連の流れを分析することは、サブスクリプションサービスや通販の定期購入などで、とくに重要となります。
分析を行うことで、ボトルネックとなっている箇所が可視化されるのです。
解約時にアンケートをとるなど、顧客が解約する理由を把握することで効率的なサービス改善が可能になり、洗練された商品・サービスが提供できます。
商品やサービスの向上は満足度向上につながり、リピーターや継続利用者が増えると予測されます。
そうすると、LTVも自ずと向上します。
しかしながら、フロー分析を行うには、何からはじめれば良いかわからない人も多いと思います。
場合によっては、データ分析ツールの導入や、データサイエンティストへの相談も必要となってくるでしょう。
顧客ロイヤリティを高める
LTVを高めるには、顧客ロイヤリティの向上が必須です。
顧客ロイヤリティとは、顧客が企業や商品に感じる信頼や愛着のことです。
顧客ロイヤリティが高まると、自社のサービスや商品をより多く利用してもらえることに加え、口コミやSNSなどを通じて周囲の人に商品の魅力を伝えてもらえる場合もあります。
顧客ロイヤリティを高める施策としては、広告の活用が考えられます。
洗練されたTVCMや新聞・屋外広告を打ち出すことで、瞬時に不特定多数へ企業イメージやブランドを認識してもらえるため、信頼性の向上につながるのです。
また、拡散性の高いSNSであれば、低コストでターゲットを絞った情報を発信できます。
TVCMやSNSといった広告の活用により、ブランドイメージが構築できます。
まとめ
このページでは、LTVの概要や重要性について説明しました。
LTVは、ビジネスを効率的に進めるうえで、必要不可欠なものとなっています。
とはいえ、LTVを意識したマーケティングが難しいと思う方もいると思います。
その際には、コンサルティング企業やマーケティング企業に相談することも一つの手段です。
LTVを取り入れて、効率的に顧客へアプローチしていきましょう。